深谷先生と飯降先生

ゴビ「博士、よくお道では、おたすけ名人なんてよばれる先生がおられますが、やはり、おたすけにもコツみたいなものがあるんですかね?」
博士「それは、無いな。」
ゴビ「えっ、どうしてですか?」
博士「そうじゃな、ゴビちゃん、本席さまのお名前は分かるよね。」
ゴビ「飯降伊蔵先生ですよね。」
博士「それじゃ、河原町の初代は知ってるよね?」
ゴビ「はい、深谷源次郎先生です。」
博士「このお二人は、たいへん親しかったそうじゃな。」
ゴビ「えっ、そうなんですか。」
博士「そのお話をして上げよう。」
ゴビ「はい。」
博士「飯降先生は、河原町を訪れることを大変楽しみにしておられたし、深谷先生もおぢばへ帰ってこられると飯降先生のお宅を訪ねるのを非常に楽しみにしておられたそうだ。
 そのせいか、深谷先生は飯降先生から、おたすけの秘伝を授けられているという、もっぱらのうわさが定着したそうじゃ。その後、飯降先生亡きあと、本部に行くたびに、青年たちから『先生、飯降先生からどういう秘伝を授けられたのですか』と、しつこく尋ねられたそうな。深谷先生は『すまなんだ。今日はちょっと忘れてきた』とその場を言い逃れておられたんじゃが、おぢばへ帰るたびに同じことをしつこく尋ねられるので、深谷先生はあるとき、とうとう『わかった。そこまで言うなら、今度河原町へおいで。こりゃ、お聞かせするしかないのぉ。』ということになったそうじゃ。」
ゴビ「で、それからそれから…」
博士「そこで青年さんたちは、人を連れ合うて、はるばる京都の河原町大教会に参拝し、『今日はひとつ、先生が飯降先生からお授けいただいた、おたすけに秘伝をお聞かせ頂きますようお願いします。』と言ったところが、深谷先生は『最近の若い者はえらいもんや。よく勉強しようと思うとる。しかしなあ、おまえたち、おたすけのトラの巻を聞きに来たのなら帰ってくれ。わしらは入信しても何も知らんかった。ただ教祖の人だすけの心だけを伝えようと思うて泣きもし苦労もしながら、おたすけしたんや。ところがおまえたちは、トラの巻でおたすけしようとする。そりゃ大した心がけやな。』ということで、青年さんたちは、まっ青になって河原町大教会をすごすごと辞去したそうじゃよ。」
ゴビ「な~るへそ、やはりこの道は、こうだからこうなるというような方程式を
求めるより、真真実の心になることが先決ってことかあ」
博士「ゴビちゃん、その通りだよ。」