いんねん

博士「あれ、クマモン。リュックなんかしょってどうしたんだい?」
クマ「博士、今度学校の遠足があるんです。」
博士「ほう、いいね~。どこへ行くんじゃい?」
クマ「旅伏山です。」
博士「いいじゃないか、季節もちょうどいいしね~」
クマ「はい、先生に聞いたら、バナナはおやつに入らないそうなので、おやつとは別に持って行こうと思います。」
博士「そういえば、そういう定番の論争があるね。」
クマ「何を持って行こうか考えるとワクワクしますね。」
博士「ところでクマモン。いんねんの話をしようか?」
クマ「いんねんですか?」
博士「そうじゃよ。人は旅をすると何を持っていくか、荷物の事を考えるけど、どんな人でも、出直の旅には形あるものは、何一つ持って行くことは出来ないよね。」
クマ「出直の旅ですか?」
博士「そう、出直の旅に持って行けるものは、心についた徳と諸々のほこりだけなんじゃよ。」
クマ「ふむふむ、人は出直したとき、持って行く荷物があるんですね。」
博士「人にほどこした陰徳、人を助けた効能の理、或いは、親を喜ばした親孝行の理、反対に人をだました理、人を倒した理、親不孝の理」
クマ「なるほどなるほど」
博士「目には見えねども、心に積んだ徳、不徳だけを持って行くんだよ。」
クマ「未来の幸不幸の元になるものですね。」
博士「来世、理には見えねども、みな帳面につけてあるのも同じ事なんだと教えてもらってるね。」
クマ「そういえば、聞かせて頂いたお言葉に『余れば返す、足らねば貰う、平均勘定はちゃんとつく』っていうのがありました。」
博士「よく知ってるじゃないか?」
クマ「えへへ」
博士「前生から持って来たものを今生で、これを通りかえすのである。これが善し悪しの因縁であるというわけなんだな。」
クマ「よし、今日も徳をつむことを忘れずにがんばるぞ~。」